「変わった世界 変わらない日本」を読みました
野口悠紀雄さんの「変わった世界 変わらない日本」を読みました。
経済の側面から見れば、IT革命とは、集中型の情報処理システムの優位性が低下して、分散型の情報処理システムの優位性が向上したことだ。分散型情報システムが進歩すると、分権型経済システムの優位性が高まる。このため、計画経済に対して市場経済の優位性が増し、大組織に対して小組織の優位性が高まる。
このような状況の中、日本の企業はIT革命にも乗り遅れたため新しい産業が興らず、経済が発展していないということである。
変化のスピードが速い現在は、動きが遅くなりがちな大企業よりも、小企業の方が有利だと述べています。
実際にこの日本が停滞している間に米国を中心に、IT系の元中小企業が大企業になっています。
アベノミクスについては、マネタリーベースを増やしていてもマネーストック(M3)は増えていないことを上げて、資金需要が無いのにマネタリーベースだけを増やしても空回りで、株価を上昇させただけで、実体経済は改善していないと言っています。
円安については、貿易収支が赤字の現状では貿易赤字を拡大させ、企業利益を圧迫すると述べ、円安の再評価をしておくことが必要だと警告しています。
最後に、現在の状況に対する対策としては、
やってはいけないことは、
「古いものを守ってはいけない」
「政府がブループリントを描くことは出来ない」
何を目指すべきか?
・高度サービス産業の構築
・製造業の新しいビジネスモデル(1)水平分業
・製造業の新しいビジネスモデル(2)製造業とサービス産業の中間
・高齢者の需要を開拓する
以上のような内容になっています。
非常に共感するのは、円安についての言及です。
貿易収支の赤字がこれだけ報道されているのに、昨日の日経新聞で「2014年3月期は円安がニッポン株式会社の収益を押し上げた」という記事があります。
個別の企業のことならともかく、日本という括りでしたら、海外投資からのリターンなどもあるのでしょうが、それは一部の大企業などだけで、少なくても円安を手放しで喜ぶ状況にはないと思いますが、どうなのでしょうか。
もう一つ共感できるのは、「古いものを守ってはいけない」ということです。
インドではモディ新政権が発足し、世界72億人の人口のうち、中国の13億人に次ぐ
12億人の人口を擁するインドが変わってゆくことが予想され、日本専用工業団地なども1年後の生産開始を見込んでいるようです。
インドと中国で世界人口の1/3を占めるのですから、もう単純な製造業で昔の日本には戻ることは出来ません。
昨年2回インドに行きましたが、地下鉄の乗り方が解らない家族や、観光地で道を聞いてくる家族を短い期間で多く見かけました。
中間層は確実に増えているので、政治の後押しがあれば次の中国になり得るでしょう。(多様性の国なので、中国より時間はかかると思いますが。)
インドの3大神は、創造、維持、破壊の神様だそうです。
破壊をしないと創造は出来ないということでしょう。