「データの見えざる手」を読みました

 

日立製作所 中央研究所の矢野和夫さん著の「データの見えざる手」を読みました。

全体的に非常に興味深い本ですが、第2章の「ハピネスを測る」の部分について

触れてみようと思います。

 

まずは、興味深い引用から始まります。

この10年間で、人間のハピネスに関する研究が急速に進歩しているそうで、

カリフォルニア大学のソニア・リュボミルスキ教授の著書「ハピネスの方法」に書いてある、インタビューやアンケート、一卵性双生児に対する地道な研究によりわかったことが、

 

幸せは50%は遺伝的に決まっていることが明らかになった。

うまれつき幸せになりやすい人と、なりにくい人がいるということである。

中略

この環境要因に含まれるものは広い。人間関係(職場、家庭、恋人他)、お金(現金だけでなく家や持ち物などの幅広い資産を含む広義なもの)、健康(病気の有無、障害の有無)がすべて含まれる。驚くべきことに、これら環境要因をすべて合わせても、幸せに対する影響は、全体の10%にすぎないのだ。

 

著者は、これを知ったとき大きな衝撃を受けたということであるが、これは

世界中の人がびっくりするでしょう。

私もこれを知れただけで、この本を買って良かったと思ったくらいです。

 

それでは、残りの40%は何だろう。それは、日々の行動のちょっとした習慣や行動の選択の仕方によるというのだ。特に、自分から積極的に行動を起こしたかどうかが重要なのだ。自ら意図を持って何かを行うことで、人は幸福感を得る。

 

シカゴの空港で買ったこの本を読んで、リュボミルスキ教授とコンタクトをとり、

人間の計測と定量データ解析を専門とする著者と、幸福の心理学を専門とする

リュボミルスキ教授とのユニークなコラボレーションが始まったとのことです。

 

そして、開発された名札型のウエアブルセンサでの計測が始まる。

コールセンターでの実験で、受注率は出勤しているオペレータのスキルではなく、

(メンバーは日々入れ変わるので、当初は出勤者のスキルで受注額が変動すると予想されていた)また、性格的な向き不向きでもなく、休憩室の会話の「活発度」と相関関係があったとのことである。

 

以上の結果を総合すると、大量のデータが示すシンプルな結論が浮かび上がる。それは人の身体運動が、まわりの人の身体運動を誘導し、この連鎖により、集団的な身体の動きが生まれる。これにより、積極的な行動のスイッチがオンになり、その結果、社員のハピネスが向上する、と言うことだ。

 

話の合う人と休み時間を楽しく会話でき、身体運動の連鎖が活発に起こると、

その後の業務の生産性が高まることが実験で確認されているそうである。

 

この本を読んで、今の社会はどちらかと言うと生産性を高めるためにこの実験と逆側に向かっているのではないか、と感じました。

また、日本企業の生産性が悪いことが良く取り上げられるが、日本社会では黙々と

長時間仕事をすることが評価されがちである。

また、休みは取らないほど偉いという風潮もある。

 

そして、この内容を読んで一番思ったのは、未だに残る日本企業の命令した通りに

「ハイ」と命令されたことをただやることが評価されるという風潮である。

この実験でわかったように、積極的になって各々やる気が連鎖して成績もあがるということは、会社にとって非常に有意義なことであるが、自己の権力欲を満たしたい

一部の管理職には、「楽しそうでけしからん」とか、「自主的にやっても駄目だ、オレ様の言う通りにやれば良いのだ」ということを思うのではないか。

 

管理者が会社に貢献するためにどのようにすれば良いのか考えさせられる本でした。

 

ベルリン旅行の写真 追加

 

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